渡辺コラム

医学部・薬学部では習わない?「漢方の本当の良さと弱さ」

「医療のプロである医師や薬剤師なら、漢方についても当然詳しいはず」 そう思っていませんか?

 驚かれるかもしれませんが、医学部にも薬学部にも、漢方の授業はほとんどありません。

今回は、僕がどのようにして漢方を学び、今どうして「漢方、西洋医学、食」のすべてを大切にしているのか、その理由をお話しします。

大学では教えてくれない、漢方のディープな世界

大学によって多少の差はありますが、基本的には医学部でも薬学部でも、カリキュラムの中で漢方に割かれる時間はごく僅かです。

僕の通っていた大学は、全国的に見れば漢方の授業が多い方でしたが、それでも極僅か。自然が好きな僕にとって、その僅かな時間はまさに「至福の時間」でした。
正直なところ、当時は漢方に興味を持つ学生は圧倒的少数派でした。

では、どうやって漢方を本格的に勉強するのかというと、薬剤師の場合は「漢方薬局で修業」というのが多いです。

僕の場合は、岡山市にある漢方薬局へ入社しました。当時としても珍しい、「丁稚奉公(でっちぼうこう)」でした。

そこでの毎日は、生薬を自らの手で配合して漢方薬を作り、煎じる日々。 漢方を作る度に、生薬を少し齧って味見しました。

乾いた生薬、湿った生薬、さまざまな味の生薬――。 五感を使うことで、「生薬それぞれの性質」が、少しずつ掴んでいきました。

そこで4年間みっちりと修業を積み、国際中医専門員という資格を取得した後、さらなるステップアップを目指して滋賀県の薬局へと転職することになります。

プロの視点から見る「漢方の良さ」と「弱さ」

現場で多くの患者さんと向き合い、自分自身でも生薬に触れ続けてきたからこそ分かる、漢方のメリットとデメリットを整理してみます。

漢方の良さ(メリット)

  • 体はすべて繋がっていると意識できる (例:目の不調であっても、目だけを見るのではなく、一旦カラダ全体のバランスを見つめ直します)

  • 「未病(みびょう)」から対処できる (本格的な病気になる前に、身体が出している小さな異変をキャッチしてケアできます)

  • 重篤な副作用がほとんどない (軽い副作用はありますが、西洋薬に比べるとマイルドです。※ただし、見立てを間違えたまま長期連用するとトラブルの元になります)

  • 西洋薬では効かなかったものが、漢方でアプローチできる場合がある

  • 生薬は「野菜の延長」であり、身体の栄養になる

漢方の弱さ(デメリット)

  • 緊急医療には適さない (脳梗塞、心筋梗塞、大量出血、アナフィラキシーショックなど、一分一秒を争う急病の時は迷わず病院へ行って西洋医学の力を借りるべきです)

  • 数値をコントロールする薬ではない (「とりあえず今すぐこの症状だけをピタッと止める」という即効性や強制力は、西洋薬に比べると弱いです。※全くないわけではありません)

まとめ:「文明の力」を使いこなそう。

漢方、西洋医学、毎日の食事、そのほか様々な民間療法……。 世の中にある健康法には、それぞれ一長一短があります。

大切なのは、「漢方だけが絶対に正しい」とどれか一つを妄信したり、逆に「西洋薬は毒だ」と毛嫌いしたりしないこと。

これらはすべて、人類が積み上げてきた「文明の力」です。

それぞれの得意・不得意を正しく理解して、時と場合、そして自分の身体のコンディションに合わせて、賢くうまく使いこなしていきましょう。

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